発達障害(神経発達症/神経発達障害| 英:Developmental disorders/ Developmental disabilities)とは、先天的な脳の働き方が多くの社会における多数派のものとは異なるもので、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれる。同じカテゴリの当事者の間でも特性の現れ方が違うことがある。また、いくつかが併発することがある1)。以下の「表記のゆれ」で述べるように発達障害の表記の仕方には様々なものがあるが、差別的なニュアンスをできるかぎり廃するため、本項では特別な事情がない限り発達障害のことを「非定型発達」と呼ぶ。
いわゆる「発達障害」については、主に以下の4つの呼び方がある。
「発達障害」とは、政府の法律や一般的な場で使われるもっとも有名な用語である
参考:
1 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
3 この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
4 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う個々の発達障害者の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう
なお「障害」という表記については議論がある。もともとは「障碍(障礙)」と表記されていたが、戦後、簡略字体を採用する動きに伴い、「害」という字に置き換えられた。元来の「碍」は「さまたげ」という意味で、「傷つける、悪い影響をおよぼす」という意味の「害」とは根本的に異なる。そのため、本来の意味を通そうと、現在は「障碍」「障がい」と表現する団体・個人がある。そのため、発達障碍/発達障がいという表記もありうる。一方で日本放送協会(NHK)は、「障害」はその人自身ではなく社会の側にあり(いわゆる「社会モデル」)、障害者とは社会にある障害と向き合っている人という意味と捉え、あえて障害者の表記を行うとしている 3) 。ただし、現状で障害は社会の側にあるから障害者という表記がされるのだと受け取っている視聴者は少ないと思われる。
神経発達症群/神経発達障害群とは、アメリカ精神医学会が作成する診断基準であり、世界保健機関(WHO)の作成するICDと並ぶ事実上の国際基準であるDSMの最新版DSM-5で新たに用いられた概念で、発達障害・知的障害・一部の精神障害を総称したものである4)。なお同基準の翻訳にあたっては、日本精神神経学会においてDisorderをDisabilityと同じく「障害」と訳すことで、Disorderが「障害」を指すと混同され、“不可逆的な状態にある”との誤解を生じることもあるとして,DSM‒5の全病名で,「障害」を「症」に変えた方がよいとする意見が少なくなかった。特に児童青年期の疾患では,病名に障害とつくことは,児童や親に大きな衝撃をあたえるという意見もあった。一方で,「症」とすることは過剰診断・過剰治療につながる可能性があるなどの反対意見もあり,専門学会の要望の強かった児童青年期の疾患と不安症およびその一部の関連疾患に限り「症」に変えることにした。ただし、すでに旧病名が広まっているものに関しては、参考として「障害」とする旧病名が併記された。結果、発達障害及び知的障害の一部が症/障害を併記する形となった5))。
ニューロマイノリティとは、California Institute of Integral Studies(CIIS)准教授で性的マイノリティで自閉スペクトラム(ASD)の当事者でニューロダイバーシティ研究の第一人者の一人であるNick Walker氏が提唱した概念・Neuro-minorityの日本語表記である。直訳は「神経学的少数派」。同氏はニューロマイノリティという言葉を、「神経学的に定型でない人々を指す、良い、病理化しない言葉」として考案した6)。現在、特にニューロダイバーシティを支持するASDやADHD,統合失調などの当事者や支援者の間で積極的に使われている。しかし、日本では地名度が低いことからニューロダイバーシティを支持していてもあえて知名度の高い「発達障害」など他の用語が使われることが多い7)。対義語はニューロマジョリティ(神経学的多数は)又はニューロティピカル(神経学的に典型的な発達をする人。定型発達)。
精神科医の水島広子さんによれば、「非定型発達」とは、脳の発達の特性に凸凹があるタイプで、それは社会生活に支障をきたす(発達障害に該当する「病名」の診断が下りる)こともあれば、特に支障をきたさないこともある8)。発達障害という言葉は適切ではないとして考案された言葉であり、上述の「ニューロマイノリティ」とほぼ同義(あるいは訳語の1つ?)である。対義語は定型発達。
本項では、法令によって定められた「発達障害者」に関する法律について扱う。
4月2日 世界自閉症啓発デー:当事者を疎外し、「自閉症の当事者がいかに恐ろしいか」を啓発して偏見を助長する場面が散見されたため、当事者や人権団体からは批判の対象になることがある。
6月18日 自閉プライドデー(Autistic Pride Day):世界自閉症啓発デーに対抗して当事者コミュニティが立ち上げた、当事者の尊厳を祝うための祭日
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